主人公Kはこの時代が取り立てて面白くもなく、しかも100年に一度の大不況で食べる物にも事欠く有様だったので、未来の世界がどうなっているか、取り分け未来の世界ならばすべての人々が笑い合いながら楽しく幸福に暮らしていると思ってタイムマシンで西暦2009年のこの時代から西暦3000年の未来の時代に飛び立った。
しかし、着いたところの西暦3000年の世界は西暦2009年の時代のように人間がロボットを管理している時代ではなく、人間の頭脳をはるかに超えた『神』のような頭脳を持ったロボットが人間を支配している時代であった。そしてそこは、もうすでに人間が労働からとっくの昔に解放されて、朝起きて、食べて、寝るといった以外に取り立てて何もすることがない状況に置かれていた時代であった。そのため、自殺する者や頭に異常を来す人々で溢れていた。この閉塞状況を打ち破ろうと思っている人々も中にはいたが、何せロボットが人間を常に監視しているので神のような頭脳を持ったロボットどころか監視ロボット一台ですら壊すことができなかった。
そのような状況をこの時代の人々から聞いて、Kは【未来の世界は幸福に包まれているはずだ!未来の世界がこんな不幸な時代であってたまるか!】と憤りを感じたが、それとともに【食べる物にも着る物にも住む所にも事欠かなく、その上辛い労働からも解放されたこの時代に住み着くのも悪くはないな】と思い、この時代に住み着こうかとも思った。
しかし、Kの目的というかKがこの時代に来た理由は自給自足の優雅な生活をするためでもなく、また自分の幸福を求めることでもなく、真のユートピアを探しめることであったと同時にこの宇宙が最終的に平和に向かっているか破滅に向かっているかを知りたかったことである。そのため、Kはこの一見優雅で快適な生活を振り切って再び真のユートピアを求めて更なる未来の時代に飛び立った。
書き下ろし 長編小説。